『嫌われる勇気』という本をご存知でしょうか?
2013年の発売から、いまだに売れ続けているベストセラーなので、タイトルは聞いたことがあるかもしれませんね。
内容としては近年、現代的な思考が話題のアドラー心理学を題材としています。
アドラー心理学は知るだけでも世界観が変わる考え方ですので、生きづらいと感じている人にはぜひ読んでほしい一冊です。
この本の解説は至るところにありますので、特にHSPの目線から知ってほしい部分を抜粋して紹介します。
もし、いま生きづらいと感じているなら、考え方が良くないのかもしれません。
ものごとの視点をひっくり返すような考え方に出会えますので、ぜひ読んでみてください。
概要
タイトル | 嫌われる勇気 |
著者 | 岸見一郎 古賀史健 |
出版社 | ダイヤモンド社 |
発行 | 2013年 |
発行部数は国内で200万部、世界では500万部超というとんでもない数字を記録しています。
タイトルである『嫌われる勇気』とは自分らしく幸せに生きるための方法と、それに必要な要素として作中で紹介されます。
嫌われる勇気が幸せにつながるとはどういうことなのでしょうか?
その点を見ていきましょう。
感想
アドラー心理学をテーマにしていますが、学術書のように難しい内容ではありません。
二人の登場人物の会話劇として、読み進めていけます。
ストーリー性があるので、内容もすんなりと入ってきます。
登場人物は「青年」と「哲人」の二人だけ。
特に生きづらさを抱えている「青年」には、共感する部分も多くありました。
反対に「うわぁ、こういう人いるなあ…」という場面もありますが。
ただ、そのどちらの場合でも、「哲人」が喝破してしまうところにカタルシスを感じます。
本はあまり読まないというかたでも、読みやすいと思います。
発売から時間が経った今でも売れ続けていることにも納得の一冊です。
根本を覆す考え方
この本はアドラー心理学をベースとしていることはすでに書いたとおりです。
しかし「アドラー心理学」というものを聞いたことがあっても、その内容までは知らないという方も多いのではないでしょうか?
この本を読んで感銘を受けたと同時に、その本質である部分を抜粋して紹介していきます。
- 原因論でなく目的論で考える
- すべての悩みは対人関係の悩みである
- 嫌われる勇気=幸せになる勇気をもつこと
- 変わらないという決意をしていること
アドラー心理学を知らなくても、これらの言葉は聞いたことがあるという方もいるかも知れません。
生きづらさの根本とその対処法を語ってくれています。
これを順を追って、ひとつずつ見ていきましょう。
原因論でなく目的論で考える
哲人 過去の原因ばかりに目を向け、原因だけで物事を説明しようとすると、話はおのずと「決定論」に行き着きます。すなわち、われわれの現在、そして未来はすべてが過去の出来事によって決定済みであり、動かしようのないものである、と。違いますか?
青年 では過去など関係ないと?
哲人 ええ、それがアドラー心理学の立場です。
「原因論でなく目的論で考える」というのが、アドラー心理学の基本的な考え方です。
その例えとして主人公といえる青年、その友人の話が出てきます。
青年の友人は親の虐待によって引きこもりになったと語ります。
そのことに対して、哲人は反論します。
虐待があったから引きこもりになったのではない、「外にでない」という目的があって部屋からでないのだと。
そのために、自分のなかに恐怖や不安を捏造しているにすぎないと。
青年の考え方が原因論、哲人の考え方が目的論ですね。
すごい考え方ですよね。
虐待を受けたから引きこもりになったと考えるのが一般的です。
本書ではそうではなく家から出ないという「目的」があるから引きこもっているのだと言っています。
ちょっとこれはやや極論のような気もしますが、哲人の言うことにも一理あります。
なによりそう考えると物事の見え方が変わってきそうな感じはします。
少し分かりづらい例えかもしれませんので、次のパートでもう少し掘り下げてみましょう。
これに続けて、感情も原因によって引き起こされるのではなく、目的によって利用しているのだと語るのです。
怒りは捏造されている
哲人 要するに、怒りは出し入れ可能な「道具」なのです。電話がかかってくれば瞬時に引っ込めることもできるし、電話を切れば再び持ち出すこともできる。(中略)自分の主張を押し通すために、怒りの感情を使っているのです。
感情も目的論によって作られるものだと哲人は語ります。
怒りはコントロールの効きづらい感情の一つですが、それすらも目的によって利用しているにすぎないのだと。
怒るにたる原因や理由があるから怒っているのではないということです。
怒るべき「目的」があるんですよね。
多くは他人を屈服させたい、自分が上位に立ちたい、そんな目的でしょうか。
これには僕自身、共感する部分がありました。
僕はあまり怒ることないので、周りの人が怒っていると不思議に感じることもあります。
別に怒るほどのことじゃないけどなあと感じたり。
怒るべきことなんてそんなに多くないとも思いますし。
この理論を聞いて思ったことは「ああ、あれは怒りという便利な道具にすがっていたんだな」ということ。
他人を屈服させる「道具」として怒りという安易な状況を作り出していたんだと納得しました。
自分自身は怒らないことはどこか空虚で、他人に興味がないような気がして、なにか良くないことのように思っていました。
でも、それでいいのかもなと思えた瞬間が、この本を読んだときにありました。
このように物事を原因論でなく目的論で考える。
これがアドラー心理学の考え方です。
物事をそう考えると、視点がくるりと変わるような感覚がありませんか。
すべての悩みは対人関係の悩みである
哲人 「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」。これはアドラー心理学の根底に流れる概念です。もし、この世界から対人関係がなくなってしまえば、それこそ宇宙のなかにただひとりで、他者がいなくなってしまえば、あらゆる悩みも消え去ってしまうでしょう。
「すべての悩みは対人関係の悩みである」という言葉は有名になっているので、聞いたことがあるかもしれません。
お金も仕事も愛も健康もすべての悩みは対人関係から生み出されます。
そうですよね。
もしこの世界にひとりだとしたら、そもそも悩みは生まれません。
そこに他人がいるから、比較対象が生まれて嫉妬したり、羨んだりするのです。
でもだからこそ苦しいのだとも思います。
それゆえに、反対に幸せを感じるのかもしれません。
アドラー心理学における最終目標は「共同体感覚」であると哲人は語ります。
対人関係のゴールは共同体感覚
もしも他者が仲間だとしたら、仲間に囲まれて生きているとしたら、われわれはそこに自らの「居場所」を見出すことができるでしょう。さらには、仲間たち─つまり共同体─のために貢献しようと思えるようになるでしょう。このように、他者を仲間だと見なし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることを共同体感覚といいます。
「すべての悩みは対人関係の悩みである」とするなら、反対に幸せになるための源泉も対人関係にあると言えます。
そして幸せになるためには対人関係のゴールである共同体感覚に至ることであるとしています。
誰かの役に立っているという感覚はかけがえのないものであるし、それを感じたときに人は幸せを感じるのだと。
これは家族や職場といった限定した人間関係に限定されません。
大きく人類という大きな川の流れのようななかに身を置くことだといいます。
これは僕の解釈ですが、自分という軸を手放していくことが大事だと思いました。
そして、人類の進歩という大きなうねりのようなものに、自分の役割やすべきことを見つけてそれをすることだと。
そうやって自分の幸せにつながるのだと理解しました。
この部分は急に大きく宇宙とかいいだすので、実体がつかみづらいなと正直思いました。
共同体感覚という言葉は使われていませんが、同じようなテーマで書かれた本はいくつかあります。
それらはその一点について一冊を使って書かれていますので、そちらの方がわかりやすいかと思います。
(それほどまでに大きなテーマでもあるということかもしれません。)
具体的には『君たちはどう生きるか』『大河の一滴』などです。
人間や人類を大きな川の流れに例えられ、行動を起こそうと思わせる熱量がある一冊です。
興味があればこちらも手にとってみてください。
では幸せになるにはどうしたら良いのか。
それは「幸せになる勇気」をもつことである。
そして「幸せになる勇気」とは「嫌われる勇気」をもつことだと言うのです。
え、どういうこと?
次に段落で解説します。
嫌われる勇気=幸せになる勇気をもつこと
哲人 とはいえ、われわれの努力とは関係なく、わたしのことを嫌う人もいれば、あなたのことを嫌う人もいる。あなたは誰かから嫌われたとき、または嫌われているのではないかと感じたときどのような気分になりますか?
青年 そりゃあ、苦しみのひと言ですよ。なぜ嫌われてしまったのか、自分の言動のどこがいけなかったのか、もっとこういう接し方をすればよかったんじゃないかと、いつまでもくよくよ思い悩み、自責の念に駆られます。
嫌われたくないと思って常に立ち居振る舞いを気にしていませんか?
ぼくもそうです。
でもそうしていたとしても嫌われることはありますし、万人から好かれることは到底無理なんです。
それを理解していながらなぜ、そうしてしまうのか。
それは嫌われることは自分に原因があると思っているからです。
嫌うかどうかは相手の問題であって、自分の課題ではないのです。
課題を分離して、嫌われる勇気を持たなければ自由を手にすることはできない。
永遠に幸せになることはできないと語ります。
そんな自分を変えたい変えたいともがいている人も多いと思います。
同時にそんな簡単に人は変われないよとも感じているはずです。
『嫌われる勇気』ではそれは変わらないのではなく、変わらないという決意をしているのだとしています。
人は変われる。
そのことを最後に紹介して終わりにします。
変わらないという決意をしていること
新しいライフスタイルを選んでしまったら、新しい自分になにが起きるかもわからないし、目の前の出来事にどう対処すればいいかもわかりません。未来が見通しづらくなるし、不安だらけの生を送ることになる。もっと苦しく不幸な生が待っているかもしれない。つまり人はいろいろと不満はあったとしても、「このままのわたし」でいるほうが楽であり、安心なのです。
人は死の直前まで変わることができるというのがアドラー心理学の立場です。
過去の人生はこれから先の人生にはなんの影響も及ぼさないと。
変わりたいと思うなら、まずやるべきこと。
それは「それまでのライフスタイル」をやめること。
そこがスタート地点です。
それができていたら苦労はないですよね。
だから勇気なんです。
勇気をもつこと。
変わりたいと思うなら、勇気を出して一歩を踏み出すしかありません。
それを勇気づけてくれる言葉が、この本にはあります。
どうしても今のまま踏み出せないのなら、この本を手にとってみてください。
おわりに
以上『嫌われる勇気』の紹介でした。
紹介部分だけでも、胸にぐさりとくる言葉が多くありますね。
まとめるのが難しく、基本的なところだけしか抽出できなかった印象です。
もっと深いところや具体的なことも書かれていて、本当にすごいんです。
アドラー心理学の概要的な部分も多いので、これをきっかけにしてより深く理解していくことをおすすめします。
興味があれば読んでみてください。
世界観が変わるかもしれません。
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